実家の片付けは、ある日突然「今日から始めよう」と思って始まるものではありませんでした。私の場合は、母の家で見た小さな違和感が少しずつ重なって、ある日「これは片付けというより、暮らしの問題だ」と気づいた、という順番でした。
最初は、1つずつの出来事でした。それが重なっていると気づいたときに、はじめて「サインかもしれない」と思いました。
買い物の量が減っているのに、冷蔵庫が埋まっていることのほうが、私には引っかかりました。同じものを買い直している、という小さな傷みが重なっていたからです。
どれも、1つだけなら「忙しいのだろう」で終わります。重なっているのに気づいたのが、最初のサインでした。
正直に書くと、最初は少し腹が立ちました。なぜ捨てないのか、なぜ開けないのか。でも、開けていない郵便の前で困っていたのは母自身でした。片付けられないのは性格ではなく、判断に使える力と時間が減っている状態だったのだと思います。
そこで、言い方を変えました。「片付けよう」ではなく、次のように伝えるようにしました。
「片付けよう」と言われると、本人には「捨てられる」と届きます。物の話として伝えると、抵抗は減りました。
責める言い方をやめると、作業は進むようになりました。本人が否定されていると感じると、物を守ろうとして、手放す話そのものができなくなります。
※本人の状態が気になるときは、片付けより先に、暮らしを支える相談を検討してください。地域包括支援センターなど、公的な相談先があります。
「片付ける」を目的に置くと、どこまでやれば終わりか分からなくなります。だから私は先に、目的そのものを置き直しました。
| 安全 | つまずく物、踏むと危ない物、使っていない家電の配線、風呂場と階段。まずここだけを見る |
|---|---|
| 暮らしやすさ | よく使う物が手の届く場所にあるか。動く道に物が置かれていないか |
| 続けられる量 | 1回に1か所。本人が疲れたら、その日は終わりにする |
| 誰がやるか | 自分だけで抱えない。支援の人が入っているなら、どこまでお願いできるか先に聞く |
もう1つ確かめたのは、本人が自分で決めたい範囲です。全部をこちらで決めると、次の週には元に戻っていました。
判断の材料として確かめたのは、「捨てるかどうか」ではありませんでした。「その物があることで、その人が困っていないか」です。この問いに変えると、迷いが減りました。
目的を安全と暮らしやすさに置き直すと、いらない物を選ぶ理由が変わります。値段は関係なく、「その場所にあると危ないか」だけで決められます。捨てる練習をしなくても、物は自然に減っていきました。
「片付け」という言葉を使わず、「歩きやすいようにする」「電気の線をまとめる」と言い換えただけで、手伝いを頼みやすくなりました。
実際に、家全体を片付けたわけではありません。手を入れたのは、通路、床の上、階段、風呂場、そして郵便物だけです。それでも、家の中を歩くときの緊張は変わりました。
サインは、探して見つけるものではなく、重なったときに見えてくるものでした。
サインに気づいた日から、片付けは「いつかやること」から「今日少しだけやること」に変わりました。一度に終わらせようとしないこと。片付けること自体を目的にしないこと。この2つを、今は大事にしています。
片付けは、体と時間がいちばん要る作業です。家族だけでは運び出せない量になってから、量に気づくことが多いので、私は先に金額の幅だけ見ておくようにしました。
実家の片付け・遺品整理のお申し込み後、ご登録の連絡先へ確認の電話が入ります(見積もりは無料です)。「WEBだけで完結」「営業電話ゼロ」をお約束するサービスではありません。