両親が他界し、田舎の実家に誰も住まなくなったとき、いちばんつらかったのは「片付け」ではなく「この家をどうするかを決めること」でした。家を手放すのは、もう一度、別れをやり直すような感覚でした。
実家には、帰る場所としての役割がありました。盆と正月に帰り、子どもを連れて帰り、母の作ったものを食べる。その前提が崩れると、家は一気に「管理しなければならない対象」に変わります。
最初の1年は、正直なにも決められませんでした。県外に住んでいるので、行けるのは月に1回。行けば片付け、帰ればまた元通り。決めないまま固定資産税と光熱費の請求だけが届き続けました。
「実家ロス」という言葉をあとから知りました。家を売るのは、単に不動産を処分することではありません。家族の記憶が入った箱を手放すことです。
だから「実家を売ってもいいのか」と何度も自問しました。売るのが正解なのか、残すのが親孝行なのか。
結論から書くと、この問いに「正解」はありませんでした。ただ、決められないまま放置した期間が、いちばん消耗しました。
固定資産税・維持費・管理の手間から解放されます。ただし「思い出」とは別れることになる。買い手がつくまでの期間と、引き渡し前の片付け(家財の処分)が必要です。
収入にはなりますが、貸した以上は「管理する責任」が続きます。設備の故障、退去時の対応、近隣トラブル。遠方に住んでいる場合の負担は想像より大きいです。
気持ちは楽ですが、実質は「空き家を所有し続ける」選択です。人が住まない家は想像以上に早く傷みます。そして毎年、費用と手間が発生し続けます。
私の実家も、1年空けただけで雨戸の建付けが変わり、庭は手がつけられない状態になりました。空き家の問題は、放置した分だけ後で全部まとめて降ってくることです。
※税金・法務の個別判断は税理士・司法書士等の専門家にご確認ください。ここでは私が実際に困った点だけを挙げています。税制の取扱いは改正されることがあります。
悲しい決断だからこそ、手順は冷たく進めるのが良いと今は思っています。
とくに1番でつまずく人が多いと感じます。家の中身が残ったままでは、売却の話が先に進みません。遺品や家財の整理と、不動産の相談を別々の業者に丸投げすると、段取りの調整がすべて自分に戻ってきます。
私は「家財の整理」と「売却の判断」を同時に進めるために、まず複数社の見積もりを並べて相場を知ることから始めました。感情だけで決めないための材料になります。
実家の片付け・遺品整理のお申し込み後、ご登録の連絡先へ業者から確認の電話が入ります(見積もりは無料です)。「WEBだけで完結」「営業電話ゼロ」をお約束するサービスではありません。
最後に。家を手放したあとも、思い出は消えませんでした。消えると思っていたものが消えなかった、というのが実感です。決めるのがつらいのは、それだけ大事だったということだと思います。