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親の遺品できょうだいがもめた。分ける前に戻ってよかった話

母が亡くなって数か月たったころ、きょうだい三人で実家に集まりました。あの日は、途中から誰も口をきかなくなりました。もめている理由は、たぶん物の量でも値段でもありませんでした。それに気づくまで、私はずいぶん時間を使いました。

もめていたのは、物の値段ではなく「親の時間の分配」だった

最初の話題は、どの食器棚を誰が持つか、という話でした。ところが話しているうちに、「あなたは毎週帰っていたから」「こっちは仕事を休めなかった」に変わっていました。ここでようやく、争点は物ではなく、親に使った時間の分配だったのだと分かりました。

料理をしていた人が台所の物を持っていく、という流れにも、少しだけ引っかかりがありました。物の話は、感情の話に翻訳されやすいからです。食器棚の話をしていたつもりが、いつのまにか、親の介護にどれだけ関わったかの話になっていました。

物の値段でもめていると思っている間は、解決の糸口が見えません。金額の話には、調べれば分かる答えがあります。時間の話には、そもそも答えがありません。答えのない話を、答えのある話の形でしようとしていたのが、あの日の行き違いでした。

形見分けの前に、全員でやったこと

その日のうちに物を分けるのはやめて、次の3つだけをやりました。

紙に書いた希望を見比べると、意外な偏りが見えます。同じ物に3人が手を挙げている一方で、誰も書かない物のほうがずっと多い。争点になっていたのは、実はごく一部でした。

写真が意外に効きました。物そのものは誰か1人の元に行きますが、写真は全員が持てます。手放したあとに「あれはどうなった」と問い合わせる空気が、うちでは起きなくなりました。

話が止まったときに、確かめたこと

「欲しい人が持てばいい」だけでは決まりません。私たちは、判断の材料を先にそろえることにしました。

使える物か、記録として残したい物か使える物は希望者で分ける。記録として残したい物は、写真にして共有する
持ち帰った先に、置く場所があるか置き場所を言えない人が持つと、あとで手放すことになりやすい。置く場所を先に説明できるかで決める
親が元気なときに、話していたか「あの皿はあなたに」と聞いていたなら、その希望を優先する。聞いていなければ、全員が同じ情報を持っているとは限らない
値段を調べる必要があるか調べるのは、売るかどうかを決めるとき。分ける話と、値段の話は切り離しておく

ここを先に確かめると、「なぜそれを持っていくのか」を言葉で説明できるようになります。説明できない物は、たいてい誰かを傷つけます。

※遺品の中に現金・通帳・保険証券・権利書などが混じっていることがあります。形見分けの前に中身を全員で確認し、相続に関わる判断は必要に応じて専門家に相談してください。

「持ち帰って考える」を選んでよかった

あの日は結論を出さず、日をあけて連絡することにしました。結果として、いちばん欲しがっている人が全部を持っていく形にはなりませんでした。それぞれが少しずつ選び、残りは写真で共有する形に落ち着いています。

次に集まる日を決めてから解散する、というのも効きました。期限のない「また今度」は、連絡が来ないまま終わります。

時間を置くと、欲しさの質が変わります。「今ほしい」が「置くと決めた」に変わると、後から手放さない物が増えます。もめている最中に決めなくてよかった、と今は思っています。

もめたこと自体は、悪いことばかりでもありませんでした。あの日に言い合ったから、その後の話が早くなった面もあります。

物は、親が生きていた時間の一部です。だから分けるのは難しい。順番としては、感情の話を先に、条件の話を後に。それだけで、少し楽になります。

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きょうだいの話は、感情と作業を分けると進みます。私は「気持ちの整理は自分たちで、量の多い運び出しと処分は任せる」に分けてから、ようやく前に進みました。

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